AXIES研究会「改正著作権法第35条 活用ガイドライン構築に向けて」
(note.comに書いたものの転載です。)
AXIESの研究会「改正著作権法第35条 活用ガイドライン構築に向けて」に参加しました。改正著作権法が昨年施行されましたが、35条で新設された公衆送信補償金制度については公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)の発足以降もなかなか話が進んでいないようで、やっと著作物の教育利用に関する関係者フォーラムによる論点整理が公表されたところです。今回の研究会ではフォーラム共同座長の竹内比呂也先生(千葉大学副学長)の講演を中心として新35条の意義や今後のあり方について議論されました。当日資料が公開されており、AXIESによる概要説明はCC-BYで各大学が利用可能です。
竹内先生は権利制限自体が重い規定であることと、ガイドラインのグレイゾーンの存在の重要さを何度も強調しておられました。また、高等教育機関としての今後の対応として以下の4点を挙げておられます。 • 意見聴取への対応(要望・主張) • 著作物の適切な利活用についての普及啓発 • 学内対応部署の整備 • オープンアクセスの推進,OERの推進
わたしは著作権者との信頼関係のためにも組織的な懲罰規定を整える必要性について質問したのですが理解していただけなかったようです。これにかぎらず質疑はとてもディフェンシブなのは残念でした。
論点整理で画期的な内容としては、「学校その他の教育機関が主催する公開講座」が入っていることでしょう。MOOCも規模や提供方法によっては権利制限の対象となります。この件については数年前のAXIESで意見を述べたのですが、そのときのスピーカーに「オープン」て表現している時点でダメ、と一刀両断にされた覚えがあります。法律を踏まえた筋道を立てることによって実現したことに感謝いたします。
もう一点、質疑で「授業の過程」がどの期間なのかという質問と懸念がありましたが、明確な考えが示されませんでした。この件への対応としてeポートフォリオを持ち出す議論もあるようですが、学位プログラムの中に位置づける方が筋がよいと思います。また、大学自身が授業科目をぶつ切りにしていることも問題であると質問者のMさんにはお話しました。このあたりについては別に書こうと思います。